ベジタリアンアスリートの食事から、運動能力の高さの理由を探る!
以前、ベジタリアンのパフォーマンスはどうなのか?という記事をupしました(←コチラを参照)が、今回はその更なるアップデート版であり、ノンベジの人にも参考になるであろうパフォーマンス向上の効果があり得る食事のポイントについてをわかりやすくまとめます!
今回のレビュー論文は、78個もの世界中の優れた研究結果をまとめたもので、日本人ではまだ少数のベジタリアンやビーガンのアスリートのパフォーマンスがノンベジの人と比較してどうなのか?という気になるポイントを探っています。また、それはなぜなのか?ということも見えてきているので、ノンベジアスリートの人も食生活を見直す上で、非常に参考になる内容になっています!!(1)
★ベジタリアンってどのくらいいるの?
アメリカ人の3.3%がベジタリアンだと自己申告しています。そのうち、46%はヴィーガンです。つまり、卵や乳製品など一切の動物性食品を食べない厳格な菜食主義者です。
2010年のコモンウェルス国際競技大会での調査によると、8%のアスリートがベジタリアンでした。1%のアスリートがヴィーガンだったと報告がありました。この数字を聞いて、結構いるのね!と思った方も多いのではないでしょうか?
より若い人でベジタリアンは増えていて、18~34歳の人の6%が菜食主義者です。(アメリカでの調査)
植物性食品を中心とした食事への移行は、環境問題への意識の高まりと共に世界的な流れとして確かに起きつつある現象です。昨年、「Game Changers」というドキュメンタリー映画が公開され、ベジタリアン食を食べることによるアスリートのメリットについて、広く知られるきっかけになりましたが、同時に批判的意見も生じ、多くの議論が沸き起こりました。
★ベジタリアンアスリートのパフォーマンスの特徴
ベジタリアン食では、生活習慣病、つまり心臓病や糖尿病、高血圧やガンなどの死亡率が少なくなることは、多くのリサーチでわかっています。←(過去の記事はコチラ)
しかし、アスリートが気にするのは、パフォーマンスにどういう影響があるかという点だと思います。とても良い結果が出ていて、全体のパフォーマンス向上が見られるだけでなく、高強度の運動からより速く回復できることが認められました。(1)
その理由は?
①ベジタリアンは、複合炭水化物を多く摂取しているので、グリコーゲン貯蔵量が回復しやすい
多くのベジタリアンは、精製度の低い穀類を摂取しています。その結果、食物繊維、マグネシウム、葉酸、ビタミンC、ビタミンE、カロテノイドやその他のフィトケミカル(ポリフェノールなどの生理活性物質)を多く摂取しています。こういった微量栄養素を多く含む食品で、より多くの炭水化物を摂取しているのです。
体内でグリコーゲン(筋肉や肝臓に貯蔵されている使いやすい貯蔵糖質)の貯蔵量を増加させやすい食事と言えます。
そして、やはりフィトケミカルを含む抗酸化物質を多くの植物性食品から摂取していることで、高強度の運動をするアスリートの体内で多く産生される活性酸素からのダメージを少なくすることが可能です。自然な食品から摂取する抗酸化物質は、サプリメントから摂取する抗酸化物質よりも一般により良い効果があることも指摘されているので、ベジタリアンアスリートのパフォーマンスが優れたものになるわけです。
②植物性食品の摂取により抗炎症効果があり、毛細血管の血流改善がある
植物性食品を中心とした食事を摂ることで、抗炎症効果があります。そして血液の粘度が下がります。動脈の柔軟性が向上することで、血管の内皮の働きがより良くなるのです。その結果、血流が良くなり、酸素が細胞の隅々まで運ばれやすくなり、心臓の機能も向上します。特に、持久系のアスリートは、アテローム動脈硬化による心筋へのダメージは一般の人よりもリスクが高いので注意が必要です。
③植物性食品の摂取により、血液を少しアルカリ性に傾け、高強度な運動中に生じる酸性物質を中和する
ピルビン酸や乳酸といった酸性物質が、強度の高い運動時に多く産生し、それが疲労感の原因の一つになります。植物性食品により、血液が少し酸性に傾きにくくなるので、疲労感の軽減につながります。
④植物性食品の成分の硝酸塩の摂取により、最大強度に近い運動時の酸素の使用量が減る
ほうれん草やビーツなどに含まれるアク成分でもある硝酸塩は、体内で一酸化窒素に変換されます。一酸化窒素は、血流を良くすることで筋肉での酸素循環を助けます。その結果、筋肉の収縮や弛緩することを、総合的に助けることになるのです。強度の非常に高い運動中に、心肺への負担や筋疲労を減らす効果が認められます。
⑤大豆発酵食品は、たった一回の摂取でも効果が認められたパワーフード
これは、大豆発酵食品をサプリメントとして一回摂取してみたのちに、20kmのサイクリングレースを行ってみた時の効果をリサーチしてわかった興味深い結果です。レース完了時の心拍数の減少や筋力の向上が優位に認められたというものです。大豆の中のイソフラボンが、血管をリラックスさせ手足への血流量を増やし、その結果、心配への負担が減った結果とされます。
その他のリサーチでも、大豆のサプリメントの摂取により持久系運動の疲労困憊するまでの時間が長くなることなども認められています。大豆の持つ高い抗酸化作用が、アスリートのパフォーマンスや心拍数にも、良い影響があり得るということが明らかになってきました。
まだ、誤解されていることが多いのがベジタリアンの栄養なんです。
特に、ベジタリアン食だとたんぱく質、鉄、亜鉛、カルシウム、ビタミンA、ビタミンB12、ω‐3脂肪酸のEPAやDHAやヨウ素、ビタミンD、そして摂取カロリーが不足しやすいという指摘をしているリサーチがあります。しかし、多くの研究結果を見てみると、栄養バランスの悪いひどい献立のベジタリアン食を食べた結果、多くの栄養素の不足が生じていることを指摘しているにすぎません。
ひどい食事内容だったり、食事を抜かしたりしていると摂取カロリー量も微量栄養素も不足しがちになるのは、運動量の多いアスリートは、ベジタリアンだろうが無かろうが同じです。
ベジタリアンアスリートの栄養摂取のポイントや潜在的メリットについては、次回の記事(コチラをクリック)にまとめたいと思います~~♬ 続きを見る
ベジタリアン・ヴィーガンのトップアスリートの栄養摂取状況を覗いてみよう!菜食に潜在するメリットが見える!
大豆をもっと取り入れよう!
プロテインも、大豆をベースにしたものがあります!
乳製品でガスがたまるなど調子が悪くなりやすい人は、大豆ベースのプロテインを是非お試しください!
(1)Kenneth Vitale1* and Shawn Hueglin. Update on vegetarian and vegan athletes: a review.J Phys Fitness Sports Med, 10 (1): 1-11 (2021)