ベジ栄養学

乳がんのリスクと食事の関係をレビュー論文から読み解く!出来ることから実践してみましょう!

増加傾向の乳がん!食事との関係を知ろう!

はつみ顔管理栄養士 はつみ

乳がん啓発ピンクリボン

先日、大豆のイソフラボンについてのお話を書きました。
特に乳がんの心配をしている人のための続編の記事です。

一部の遺伝子変異が病気のリスクを上げるという話は多くの人が知るところとなりました。現在、調べたい人は調べることができます。気軽にネットで遺伝子変異チェックのためのキットを買って、頬の裏側をこすったものや唾液を送付するだけで調べられます。
遺伝子変異は、肥満遺伝子や糖尿病など、その他いろいろな項目を選んで調べることができます。気軽に調べられるのですが、調べた後にそれをどう自分が考え、気持ちの整理をし、今後に生かすかというのは別次元の難しさです。肥満遺伝子を確認だけなら、それほど大きな衝撃を受けないで済むかもしれませんが、ガンになりやすい遺伝子変異を持つという大きな現実を前向きにとらえることが出来るか、キットを買う前によく考えてから購入してください。
前向きにとらえることが出来るなら、的を絞ってこまめに検診を受ける、生活習慣をも見直すなどで、発症しにくいようにリスクを下げるよう暮らすことができるでしょう。遺伝子の違いによって、体質の違いを知り、対策を立てることには大いにプラスがあるので、今後、少しずつ病気の治療法の選択、栄養指導なども個別に遺伝子変異を見てオーダーメイドになるだろうと言われます。しかし、まだ先は長い…。私が生きている間にどの程度進むのかすら不明です。

遺伝子以外にも免疫力とガンの発生は、関連しています。免疫力がが落ちていくので加齢によってリスクが高くなります。加齢そのものは自分ではどうにもコントロールできませんよね。でも、免疫力を上げるようにすることは可能なので、免疫力に関与する栄養素についての記事を書いてあるので、参考にしてください。

エストロゲンという女性ホルモンが、乳がんの発生に関与しているので、初潮が早い、閉経が遅いなどもリスクを上げるとわかっていますが、これも自分でどうにもできませんよね。

でも、自分でコントロールできる生活習慣についてのリスクもたくさんあるんです!その中で、食生活は特に重要な因子となり得ます。

乳がんと食生活について、たくさんのリサーチ結果をまとめた論文(1)があります。
何が危険因子なのか、いくつ知っていることがあるでしょうか??
乳がん発生について、そして乳がんの術後の予後について考えるための情報の一つとして考えてみてください。

★何がリスクをげるのか、げるのか⁉
一つずつ見ていきましょう!

<1>肥満
減量に成功した女性
肥満していることは、乳がんリスクを上げます。
肥満は、BMIで25以上の状態を言います(食事摂取基準を参照
女性の場合、体脂肪率30%以上であることも身体組成において肥満です。
BMIは、体重kg)÷身長(m)の二乗で計算できます。

例: 身長165㎝ 体重60kgの人
60÷1.65の二乗=60÷1.65÷1.65=22.0(→肥満ではない)

ご自身のBMIは、是非把握しておきましょう!
肥満により、乳がんの発生のリスクが高まることがわかっていますが、それだけではないんです。
以下の3つすべての時期においての肥満でも乳がんによる死亡率が上がることがわかりました。
①乳がんの診断前の肥満
②診断直後(12か月以内)の肥満
③診断後しばらく経ってからの(12か月以上)の肥満

体重管理が非常に重要であることがわかります。もちろん、肥満により高血圧、脂質異常症、糖尿病などのメタボリックシンドロームのリスクも上がり、動脈硬化も進みやすくなるので、乳がんだけの話ではありません。
エネルギーバランスが正に傾き続けた結果が、肥満です。減量するには、エネルギーバランスを負にした状態を緩やかなペースで作るしかありません。肥満域にある人は、食事の調整と活動量の増加により、ゆっくり減量することを真剣に考えてみてください。

 

<2>野菜や果物を食べる
野菜と果物
野菜や果物を食べることでリスクが下がることが分かっています。
これは含まれるポリフェノールに抗酸化作用のあるものが多いのこと、ビタミンCやカロテノイド系色素を含むことなどが理由であろうということが指摘されています。
中でも、特にトマト、緑の濃い葉野菜、ブルーベリーなどのベリー類、ネクタリンなどの摂取が多い人の乳がんリスクが低いようです。
野菜や果物を食べる事で、炎症の起きやすい状態を改善してくれるという研究結果が出ているのです。炎症はガン発生原因の一つです。以前、抗炎症ダイエットについての記事をアップしたので、是非読んでみてください。

 

<3>赤身の肉とその加工品

摂取量が多い人で、乳がんリスクが高いことが指摘されています。
4つ足の動物の肉である赤身肉は、家禽(鶏肉など)とは栄養的にも身体への影響も違います。ベジタリアンの人でガンが少ないのは、野菜や果物の摂取量が多いだけでなく、やはり肉を食べないということにも関連しています。
この論文の中では、週に3回以下に赤身肉の摂取は控えるように!と書かれています。

 

<4>高脂肪食
高脂肪食でリスクが上がります。特に、肉や乳脂肪に含まれる飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸の摂取でリスクが上がることがわかりました。日本人の動物性脂肪の摂取量は、この50年でなんと約4.5倍に増えています!
1970年ごろ、つまり今から50年くらい前の脂質がエネルギーに占める割合は20%弱でした。その後、どんどん比率が増えて、現在30%弱です。30%を超えると、脂肪酸の種類を問わず、完全に多すぎます。(2)
現在、上限ギリギリなんです。まずい状況です。当然、超えてしまっている人もたくさんいます。揚げ物や洋食好きさんだけでなく、結構女性の脂質エネルギー比が高いんです。洋菓子は超高脂肪であることが多いので、要注意です。生クリームは、約半分が脂肪です!!

ケーキ作りクリーム

 

<5>nー3系脂肪酸
脂質に含まれる脂肪酸で、n‐3系脂肪酸だけはリスクを下げることがわかりました。魚やアマニ油、えごま油に多く含まれる脂肪酸です。健康のためにベジタリアンになった人は、種類を選んで魚だけは食べるペスコベジタリアンである人が結構いるのは、これも理由です。日本人には、食文化的にも地理的にもこのタイプのゆるいベジタリアンが比較的馴染みやすいように思っております。
n-3系とn‐6系の脂肪酸についての記事に詳しい内容が書いてあるので、是非参考にしてください。

 

<6>アルコール
閉経前、閉経後、どちらの人もアルコールの摂取により乳がんリスクが上がることがわかっています。
1日10gアルコールで、閉経前の人は6%、閉経後の人は9%、リスクが上がることが指摘されています。アルコール10gとは、ビールなら約250ml、ワインや日本酒なら90mlに含まれる量です。
お酒を飲む人が女性で増えています。私もその1人なので、悩ましい結果です。

 

<7>大豆
先日の大豆についての知識クイズ〇×でも書きましたが、リスクを上げる下げるの議論、ずっと続いているんです。この論文では、閉経後の女性の大豆摂取によりリスクを下げたという結論になっています。(1)これは、全然食べていない人が食べた場合の話です。
〇×クイズの記事にも書いたように、アジア人の女性、つまり日本の女性はすでに十分量食べているので、これ以上増やすことのメリットは無いと考えられます。1日に、例えば納豆1パックと、味噌汁に油揚げと豆腐が入っていた、という程度の食べ方が平均量なので、この程度で十分です。

大豆と豆腐

リスクを上げるもの、下げるものを見ていきました。上げるものを一切やめて、下げることだけ実行しよう!と思う人もいるかもしれませんが、そう思わなかった人も多いでしょう。食生活は、栄養摂取だけが目的ではないのが人間の特徴です。ただひたすら、全ての病気のリスクを下げることばかり考えて健康的な食生活を突き詰めていくと、かえって不健康な食生活になってくる時があります💦
食事は、栄養摂取だけでなく、社会的な行動でもあり、大きな楽しみでもあり、文化を感じる行動でもあり、精神状態に関わる行動でもあります。
今回の論文の内容を知って、自分の食生活を見直して、何か変えようと思うなら、この記事を読んだ今が『変え時』だったんだと思います。思わないなら、今じゃない!んだと思います。ただ、もっと早くにこの事実を知ってたら良かったな~と後で思う人がいるかもしれない。そんな思いでこの記事を書きました。

ベジタリアンの食事には、健康管理の上で優れた点があるのは事実です。その一つが、死因の1位のガンの発生リスクが下がることです。ベジタリアンとノンベジの病気リスクの話は以前に書きました。自分がどういう食生活をこれから送りたいか、考えるきっかけにしていただけたらと思います。」

参考文献:
(1) Paola De Cicco et al. Nutrition and Breast Cancer: A Literature Review on Prevention, Treatment and Recurrence. Nutrients. 2019 Jul; 11(7)

(2)厚生労働省「国民栄養調査及び国民健康・栄養調査」

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