パーム油の問題とは
★栄養的な観点から
パーム油(アブラヤシの油)そのものに毒性があるということではなく、問題は含まれる脂肪酸が飽和脂肪酸が半分以上を占めるということにあります。
パルミチン酸という飽和脂肪酸を半分も含むので、植物性油脂でありながら、牛脂の脂肪酸組成によく似ています。
100g当たりの飽和脂肪酸の含有量(食品成分表 八訂より)
・パーム油 40.08g
・牛脂 41.05g
・豚油 39.29g
飽和脂肪酸の摂取が多くなると、LDL‐コレステロール値(悪玉)が多くなり、動脈硬化を進めることがわかっているため、食事摂取基準において、総エネルギー量の7%未満にするようにと目標量が定められています。動脈硬化が心疾患や脳血管障害の危険因子になります。昔と違って、日本人は多く摂るようになってしまいました。そういう現状を踏まえて、下限値は設定されていないのは、基本的に全体に減らそう!というメッセージです。(日本人の脂肪酸摂取の現状と目標量についてはコチラ)
この7%というのは、なかなかどの程度の量なのか想像しにくいと思います。
脂の多い肉やパーム油を使った加工食品(ルウやスナック菓子、インスタント食品)などを多く食べていると、アッという間に越えてしまう量です。加工食品の揚げ油やショートニング(←の問題についての記事参照)の代用品としてもよく使われています。
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例えば、朝食にベーコンエッグ、豚バラ肉やひき肉とカレールウを使ったカレーライスを夕飯に食べ、おやつに揚げせんべいを数枚食べたとします。この時点で、2000kcal/日に総エネルギー量摂取があった人だとすると、7%をやや超える計算になるのです。その上、昼に、飽和脂肪酸を含む食品を何か少しでも食べたら、確実に目標量を守れません。※
焼肉食べ放題などに行ったら、ほぼ確実に目標量は守れないことも容易に想像がつきます。
ベジタリアンやヴィーガンの人は、肉の摂取が無い分、目標量を守りやすい食生活を送っていますが、加工食品の使用量でずいぶん差が出ます。
※ひき肉100g、ルウ20g、せんべい3枚、ベーコン40gを食べたとして計算
平均摂取量が7%エネルギー比を超えないであろう人のうち、脂質異常症や高齢者など心疾患のハイリスク者でさえなければ、それほど神経質に問題視しなくてよいのがパーム油です。でも、欧米化した食生活に急激に変わった日本で、その上、急速に進む高齢化社会の日本で、脂質異常症や心疾患と無縁の人は少ないです。(1)
それが、困ったことに、わからないことも多いんです~💦
植物性油脂とだけ表示がされていると、何を使ったかがわからないのです。先日、ショートニングやマーガリンの問題についての記事を書きましたが、パーム油が使われているショートニングも多いのです。
飽和脂肪酸の量は、推奨表示項目で、義務表示項目ではないんです。だから、多くの加工食品に書いてないので、本当にわかりにくいんです・・・。
安い加工食品で油を使ったものは、すべて要注意!と考えておきましょう。原材料がすべてわかるものを食べる事、簡単な料理で良いので食材を買って自分で調理して食べることがいかに大事か、わかってもらえると思います。
その上、パーム油は、身体に良い油ではないだけでなく、実は地球にも良くないんです。。。
環境的な観点から
東南アジア(主にインドネシアとマレーシア)など暑いところで作られているのですが、昔ながらの農業のやり方ではないんです。複雑な生態系を支える熱帯雨林を伐採して、そこに機械でマネジメントしやすい広大なアブラヤシプランテーションを作っています。オラウータン以外にも貴重な動植物の生息地を減らし、エコシステムを崩していることが指摘され出して久しいです。(2)
一旦、切ってしまった森は、もうどうやっても完全には元には戻りません。持続可能な社会を目指すというSDGs(←過去の記事参照)の考え方が少しずつ浸透していますが、対処するには遅すぎたという意見があるのももっともです。SDGsが発表されるもっとずっと前からアブラヤシのための森林伐採は始まってしまっていたんです。
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生産性は高く、安い値段で手に入るアブラヤシ。安い人件費で現地の人をひどい環境で働かせている労働環境の話も聞きます。熱帯雨林が減ったことでの地球温暖化の問題(←過去の記事参照)もあります。バイオ燃料への使用もスタートしています。
台所などの洗剤や石鹸にも使っているので、食べている分だけはなく、私たちの普段の生活の中に入り込んでいます。だから、日本人の誰もが東南アジアの森林伐採は関係ない話ではないんです。興味を持つことがまずは大事!WWFのパーム油についてのわかりやすい記事もあるので、是非読んでみてください。写真がたくさんあって、わかりやすいです。(3)
一部の企業が儲かる持続不可能な仕組みがあります。お金と権力のある人たちの声はとても大きいので、声を上げられない動植物にとって大きなマイナスがあっても表に出ないで覆い隠されてしまいがちです。でも、1人1人が出来ることはあります。身近なところにも問題があるこに是非気づいて、少しでも環境に負担がない商品を選ぶようにする消費者が増えて欲しいです。
現地の人に対して、フェアな貿易システムで輸入した製品に、フェアトレードマークというのを付けてわかるようにしています。そういうことから始めるのも良いと思います。チョコレートやコーヒーなどで見かけることが増えましたよね。
また、もはやアブラヤシを使わなければいいということでもないんです。残念ながら、もうそういう段階ではないんです。
持続可能な社会を目指すこと!自分たちだけ、自分の国だけでなく、世界の人が地球をシェアしているのですから、持続可能な生産法を模索する必要があります。
RSPO認証というものがあり、持続可能な生産したパーム油の製品に付ける動きがあります。なるべく洗剤などにこのマークがついているものを買うようにするのも一つのアクションです。それを探して問い合わせるだけでも、アクションです。消費者が望むようになれば、企業が動きます。まだ、賛同している企業が少ないので、これからです。
🎦パーム油の現状とWWFのRSPO認証の取り組みについて興味がある人は、わかりやすい動画も作られているので、是非観てみてくださいね!
🎦パームオイルプランテーションと森林伐採の問題については、朝日新聞社の2分弱の動画がわかりやすいです。是非、見てみてください。
(1)Lorenza Di Genova et al. Pediatric Age Palm Oil Consumption. Int J Environ Res Public Health. 2018 Apr 1,15(4):651
(2)松良俊明「熱帯雨林の消失とアブラヤシ・プランテーション ーマレーシアでの経験からー」京都教育大学環境教育研究年報 第19号 2011