プラネタリーヘルスダイエットとは?
自分に良い食事=地球にも良い食事♬
プラネタリーヘルスダイエット(The planetary health diet)は、今ひとつ浸透していない言葉ですが、簡単に言うとゆるベジのことです。
フレキシタリアンダイエットとも言えます。どんなコンセプトで、どんな内容かを見ていきましょう!
SDGsを自分の食生活から取り入れることにもなりますね!
Eat -Lancet Commission によって発表(←詳しい発表内容を知りたい方はクリック)されました。
持続可能な食事を地球の将来のことを考えて、そして自身の健康を考えてゆるベジに移行しようという提案です。
4月22日は地球環境について考える記念日のアースデー!(←クリック)
では、引き続き、環境問題を考えて起こすアクションの一つになり得る食事について考えてみましょう。
プラネタリーヘルスダイエットは、SDGsの考え方の食バージョンだと考えると良いかと思います。
(SDGsと食についての過去の記事も参照にしてください)
SDGs~日本で私たちにできること!食生活:今日からできる簡単なこととは?
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◆プラネタリーヘルスダイエットの中身
食事の構成は、ゆるベジです!
基本ルール
①食事の半分は野菜や果物
②穀類は、玄米や雑穀などの精製度の低いもの
③たんぱく質は植物性食品から主に摂る
④肉類の中でも特に4つ足動物の牛肉、豚肉、羊肉は抑える
④が多くの人にとって難しいと思います。
具体的に肉類を控えるとは、
・牛肉は1日に平均で14gまでにする
・鶏肉は29gを最大量にする
ことになります。
ご馳走のお肉は特別な日にだけ食べる昔の食べ方です。
毎日食べるのではないという考え方です。
③のことを考えると卵や乳製品も控えます。
・卵も1日13g=3~4日に1個くらい
・乳製品を1日250gを上限に摂取する
②の意味は、スイーツ好きさんはつらいかも!
・砂糖の消費量も減らす(1日31gを上限に)
ということも書いてあります
これで栄養的にどうかと言うと、ばっちり大丈夫です!
そんな少しの肉で大丈夫かという声が聞こえるようですが、大丈夫です!
私は一切肉類を食べませんが、プラネタリーヘルスダイエットは、ほぼ私の食生活です。卵や乳製品のところも、ほぼ私の食事です。うん十年以上、続けている私の食生活です。
よく聞かれるので一応書いておきますが、私は大変美味しい食事を毎日食べていますし、健康です。
この食生活だと、太りにくいです。だから、この食事にすることで、自然に痩せていく人もいると思います。
◆プラネタリーヘルスダイエットが、SDGsに良い理由
食糧生産は、気候変動、土地の劣化、水の利用などに深く影響しています。
動物性食品が豊富で、カロリー摂取が過剰気味の先進国の食事の摂り方は、健康によくないだけでなく、地球環境にも有害です。
地球上で、肥満と飢餓や栄養素の欠乏による問題が同時に存在しています。(1)
以前、温暖化の原因の温室効果ガスの排出が、食事によってどれだけ違いがあるかという話を書きました。
ビーガン食の人の温室効果ガスの排出は、ノンベジタリアンの人の半分程度です。
ラクトオボベジタリアンの人でも35%程度低いという試算があります。(1)
温室効果ガスを出す量の割合は?ベジタリアンVSノンベジ影響の違い!ストップ地球温暖化!
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増加している世界人口!すべての人が飢えずに、そして地球環境を壊してしまわない方法で食べていく方法を考える必要があります。
その一つのやり方が、プラネタリーヘルスダイエットです。
以下の図は、地球温暖化を進める温室効果ガスの排出量を、食品ごとに比べたものです。牛肉が、抜きん出て温室効果ガス排出量が多いことがわかります。我が子はベジタリアンではないですが、この事実を知って牛肉はほぼ食べなくなりました。
図:食品の生産におけるGHG排出量。Cluneら作。2017(23)。図に表示される値は、最小値と最大値、および中央値です。n =含まれる研究の数。CO 2 E、CO 2当量; GHG、温室効果ガス。(2)
1kgの大豆の生産に必要なのは、3.8㎡の土地、2.5㎥の水、39gの肥料、2.2gの農薬が必要です。
1kgの牛肉の生産に必要なのは、52㎡の土地、20.2㎥の水、360gの肥料、17.2gの農薬が必要です。
牛肉を生産するには、大豆の約8~14倍の資源が必要です。(2)
牛肉のたんぱく質の生産と比較してみると!
・大豆たんぱく質生産の18倍の土地
・10倍の水
・12倍の肥料
・10倍の農薬が必要なんです。(2)(3)
どう計算してみても、牛肉の生産量を多くすると、限られた資源を無駄に多用してしまうのです。
その上、食べすぎると脂質異常症などになりやすいのは、肉類の中でも牛肉がトップです。飽和脂肪酸の割合が多いからです。
健康にも地球にも、たくさん食べるとマイナスが大きいのです。
飽和脂肪酸を多く含むので心疾患や脳血管疾患などの循環器疾患は悪化させる可能性が高いのは繰り返し説明した通りです。
消化のため胆汁もたくさん分泌されるので、大腸がんのリスクも上がります。
このような計算から、持続可能な食生活、そして私たちの健康のための食事を考えたものが、プラネタリーヘルスダイエットです。
温暖化を進める温室効果ガスの排出量が減らせるというだけではありません。
★土地の利用も減らせます!
・ラクトオボベジタリアンにすると42%減らせます。
・ビーガン食に移行すると、49.5%も削減できることがわかりました。(1)
★水の利用についても減らせます。
・ラクトオボベジタリアンに移行すると、28%減らせることが11のリサーチを統合して計算した上でわかりました。
残念ながら、ビーガンの試算は、リサーチ数が少なく明らかにならなったようです。(1)
ベジタリアンなら何でも大丈夫かと言うとそうではありません。
環境負荷を考えた時には、地産地消、旬のものを中心に食べているかどうかで大きい差が出ます。
暖房をガンガン入れた温室で育てた季節外れの野菜や果物を食べるのと、旬の食べ物を食べるのとは全然違います。
はるか遠方で育てた作物を輸送して食べるのと、地元でとれたものを食べるのでも違いますから。(4)
ベジタリアンも、食材はよく考えて選ぶようにすることが、将来の地球環境への思いやり行動になります。
また、個人レベルで食品ロスを減らすことも大事です。
私も、更なる努力をしたいと思っております!
◆日本で、プラネタリーヘルスダイエットをするには?
魚だけは少し食べるペスコベジタリアンは、伝統的な和食に近いです。
若い人は実感が無いでしょうが、日本人も肉はごくたまに少量しか食べていなかった時代がありました。
「まごはやさしい」という和食によく使う食材の頭文字を並べたものをご存じでしょうか。
ご ごま
わ 海藻(わかめ)
や 野菜
さ 魚
し きのこ(しいたけ)
い 芋
これは、ほぼペスコベジタリアンです。
日本人に馴染みやすいゆるベジは、この伝統的な和食に少しだけ戻ることなのではないかと思っています。
塩辛いおかずや塩蔵品を少量食べて、大量の米を食べるという栄養失調気味だった時の和食ではありません。
昭和30~40年ごろの和食で、かつ減塩できれば日本人のメタボリックシンドロームは激減することでしょう。
野菜の量は日本人の平均で、あと70~80g増やすと良い計算になっています。不足気味です。豆や野菜や海藻を食べて食物繊維摂取量が多く大腸がんは珍しいガンで、肥満率が低かったころの食事を見直す時期が来たように思います。
日本人の死因の1位はこのところずっとガンです。
上位にはずっと循環器疾患の心疾患が入っています。
健康に年を重ねたいのは誰でも同じですが、願うだけではかないません。
温室効果ガスの排出をゼロにする目標も、願うだけではかないません。
政府にお任せしておいてもかないません。
社会が変換するのは、個人レベルの意識がじわっと変換していくことがベースになっている必要があると思います。
自分の健康管理と地球の健康管理のために、出来る範囲で出来ることをやってみようと思う人が増えることを願ってやみません。
(1)Ujue Fresan, Joan Sabate. Vegetarian Diets: Planetary Health and Its Alignment with Human Health. Adv Nutr. 2019 Nov 1;10(Suppl_4):S380-S388
(2)Clune S, Crossin E, Verghese K. Systematic review of greenhouse gas emissions for different fresh food categories. J Cleaner Prod. 2017;140(Part 2):766–83
(3)Carlsson-Kanyama A. Climate change and dietary choices—how can emissions of greenhouse gases from food consumption be reduced?. Food Policy. 1998;23(3–4):277–93
(4)Vieux F, Darmon N, Touazi D, Soler LG. Greenhouse gas emissions of self-selected individual diets in France: changing the diet structure or consuming less?. Ecol Econ. 2012;75:91–101.