食後血糖値の上昇を抑えるカギは朝食にあった!!
朝食をたっぷり食べることで、太りにくくなるという時間栄養学の記事の続編です。
確かに、夕食より朝食で食べた方が高カロリー食は、食事誘発性熱産生が大きく、血糖値が上がりにくいことが分かったとはいえ、朝食に食べるものが何でもいい!というわけではありません。甘いスイーツを朝食として食べたらよろしくないに決まっています。
朝食後の血糖値を制するものが、食後血糖値を制するんです!
でも、具体的に何が良くないのでしょうか??
⇒朝食に甘い物
⇒2つの良くないことがあるのです!
①セカンドミール効果により、次の食事(昼食)の後にまで血糖値が高くなりやすくなる
②高血糖状態が続くと、糖化が進む
セカンドミール効果とは、セカンドミール、つまり2食目の食後の血糖値上昇率が、1食目の影響を受けることを言います。
例えば、朝食に血糖値が上がりにくい食事を摂った場合、昼食後の血糖値まで上がりにくくしてくれる効果です。逆だと、当然逆になります。
①のセカンドミール効果が、大麦のβ‐グルカンという水溶性食物繊維(血糖値の上昇を抑制する効果がある)を摂取した時に本当にあるかどうかを、日本人を対象に実験した結果があります。(1)
β‐グルカンの効用についての記事を読んだ方は、あの免疫に関わる物質だ!とわかると思います。その記事も一緒に、是非読んでみてください。
以下の2つのグループに無作為に人を分けて1食目を食べてもらいます。
<グループ1>精製した白い小麦粉のパンを食べる
<グループ2>βグルカンを含む精製度の低い大麦粉パンを食べる
そして、どちらのグループの人も、2食目におにぎり3つ🍙を食べるのです。高糖質食の典型ですよね。おかずも無しに白飯だけをたくさん食べるのですから。
βグルカンの効能~オートミール、大麦、キノコの水溶性食物繊維!感染症対策にも朗報♬
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1食目の後の血糖値も計測してるのですが、もちろん白い小麦粉のパンを食べた人の方が明らかに血糖値が高かったです。これは、当たり前の普通の結果です。
問題となる2食目後はというと、60分後、90分後の血糖値が、明らかに白い小麦粉のパンを食べた人の方が高かったのです。
そうなんです!だから、朝食にスイーツとか、甘い菓子パンだけとか、ゼリー飲料だけとか、砂糖を入れたコーヒーだけとか、そういう食事を摂ることで、昼食後の血糖値も上昇しやすくなります。1日に2度、高血糖状態で過ごすわけです。太りやすく、空腹になりやすいです。糖尿病を発症したり、悪化させるリスクももちろん上がります。
はい。
糖化は、あらゆる老化現象と関係しているだろうと言われている焦げ現象です。調理の上でも起きるのですが、主に問題となるのは体内の焦げ現象です。
血糖値が高い状態が起きると、糖がたんぱく質とくっついて体温で加熱され、茶色くなっていくのです。その物質を、糖化最終生成物(AGE)と言います。脂質の摂りすぎや紫外線でも増えるとわかっていますが、血糖値が高い状態が主原因です。
糖質源は、1g4kcalなのは同じでも、体内の代謝の過程が同じではなく、血糖値上昇率によって「良い悪い」があるのです。
まず、見た目に老化が進みます。早く老けた印象になります。肌のたんぱく質が変化するので、弾力がなくなり、しわ、しみ、くすみなどが生じます。
血管の中ではLDL- コレステロールとAGEがくっついて、処理できない泡沫細胞が出来て、動脈硬化が進みます。心疾患や脳血管疾患のリスクが上昇します。
また、炎症※が起きやすくなったり、脳に溜まればアルツハイマー型認知症になりやすくなったりと良いことは何一つありません。
いい質問です!
血糖値が上昇しすぎないように節度を持って食べればいいのです。
空腹で単独で甘い物を食べれば、基本的に血糖値は急激に上がります。だから、野菜や海藻などの食物繊維源、乳製品を最初に食べてから、スイーツは食べましょう。スイーツを食後に食べるのには、意味があったのです。共に甘い飲料を飲むと、血糖値は上がりやすいので、スイーツを食べる時はお茶にしましょうね!乳製品により血糖値は上がりにくくなるので、砂糖を入れないミルクティーやカフェオレなども良いチョイスです!
また、食後30~60分後が血糖値が最も上がりやすいのですが、持久的な運動をしている人は、血中ブドウ糖が筋肉組織に取り込まれやすいです。その結果、食後の血糖値は下がりやすくなります。毎日、最低合計30分程度は歩いたりする程度の運動でいいので続けることも大事です。
主食と主菜と副菜をそろえましょう!
そして、主食の選び方が大事です。精製度の低い穀類を食べましょう。白米より玄米や雑穀入りご飯(βグルカンが多い押し麦は◎)が良いわけです。パンも白くない全粒粉パンが良いですね!どうしても白い穀類を食べる時は、単独で食べるのだけは避けましょう!オートミール(食べ方の記事参照)もおススメ食材です!
主菜は、たんぱく質や脂質が含まれるので、一緒に食べることで何であれ血糖値上昇が抑えられます。食物繊維も血糖上昇を抑える効果が高いので、納豆は素晴らしいチョイスです!
副菜の野菜やキノコや海藻は、多めに、先に食べることが大事です。具沢山の味噌汁などを食べてから、納豆ご飯を食べるなどが良いでしょう。
乳製品も血糖値の上昇を抑えると言いました。朝食後にヨーグルトを食べている人が多いと思いますが、できれば最初に食べていただくといいです。せめて、半量だけでも糖化防止のためには先に食べてみてください。
バランス良い食事の記事で書いた5点セットで食べると良いのです。微量栄養素を含めて必要な栄養素をバランス良く食べられるだけでなく、血糖値の急上昇を抑えることにも効果的な食べ方です!
主食
主菜
副菜
果物
乳製品
の5つです。
「〇〇さえ守れば痩せる!特性野菜スープさえ飲めば健康!きれいになる!的な、たった一つの事だけに集中するようなアプローチの本は、どうしても目を惹きます。でも、そういうのは大抵、ウソなんです。一つの代謝回路をズームアップして、残りの事は目をつぶって考えないようにしている無理な理論で突き進んでいるものがほとんどです。野菜は確かに良い効果のあるものが多いのだけど、ベジタリアンやビーガンだからって、必ずヘルシーな食生活を送っているわけではないんです。野菜を食べればすべての悪習慣が帳消しにはならないです。動物性食品を含まない食生活でも、3食スイーツだけを食べて健康ではいられないのは、誰にでも想像つきます。
体重が増加した背景には、また動脈硬化が進んだり、糖尿病になる背景には、複数の理由が存在します。単独の原因であることはありません。
減量の指導をしている立場の人ですら、一つのやり方、理論に固執する人がいます。繰り返し言っているうちに自分で洗脳されたかのような状態になって、柔軟な思考が出来なくなる人もいるようです。
科学的根拠をベースに考えるようにすること、でも科学はまだ発展途上なのですから、柔軟に思考してオープンな状態で学び続けること、この2点に尽きると思います。
栄養学は理論と実際(料理して食べる)の両方が必要です。興味を持たれた方は、料理したものを実際に自分で食べて、そして学んでいってほしいです!」
参考文献:(1)Tsubasa Matsuoka, et al. Consumption of a meal containing refined barley flour bread is associated with a lower postprandial blood glucose concentration after a second meal compared with one containing refined wheat flour bread in healthy Japanese: A randomized control trial. Nutrition 2020 Apr;72:110637